
☮ Posted by Kota Ishizaki2014.1.30
名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史がある店。
名店の形はさまざまです。
この「名店手帖」ではそんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的な名店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。
今回ご紹介する名店は、西国分寺駅前に位置する、クルミをテーマとしたお店。こどものための、かつてこどもだった人のための喫茶店『クルミドコーヒー』をご紹介します。
足を運ばずとも感じる、どこか懐かしいあたたかさ
「クルミドコーヒー」というお店は以前から知っていました。
ですが、なかなか足を運ぶ機会がなく、ずっと気になっていました。
HPを見ては、
良いお店だなぁ、行ってみたいなぁ、
と思いを巡らせていました。

「このカフェを、ボクらの娘たちのために作ろうと思う。」という文章から始まるクルミドコーヒーのHP。
HPを見てみると、そこにはクルミドコーヒーの様々な世界が広がっています。
光が差し込む明るい店内、優しいタッチで描かれたリスとクルミ、クルミドコーヒーのこと、私たちのこと、
と詳しく書かれた項目。
今回取材をお願いするにあたり、事前に取材お願いの為に1度、そして実際の取材の為に1度、2度足を運びました。
もちろん実際に訪れたクルミドコーヒーは素晴らしいお店だったのですが、
今回、店主の影山知明さん(40)にお話を伺って、意外な事実がいくつもありました。
どうしてもやりたいと思って始めたお店ではなかった

かつてあった木の実の森をもう一度取り戻したいという思いを込めて、大きな木をイメージして建てられた建物の1階にあるクルミドコーヒー。可愛らしい王様のロゴマークが目印となっている。
「このお店は2008年10月1日にオープンしました。1階がこうしてクルミドコーヒーとなっていますが、この建物自体の名称は『マージュ西国分寺』です。ここはもともと築50年くらいの一軒家で、僕が生まれ育った場所でもあります。その建物が空き家になってしまったこともあり、このマージュ西国分寺が生まれました。2階より上は住居スペース、1階奥には事務所スペースもあります。中でも、このクルミドコーヒーはカフェ、誰もが利用出来るスペースです。」

クルミドコーヒーの誕生について、丁寧にお話して下さった店主の影山知明さん。
「オープンして5年と少し経ちますが、今まで延べ15万人ほどのお客様がこのクルミドコーヒーに足を運んで下さっています。15万人、振り返ると、そこまで大きくないこの空間によくそれだけ多くの方々に来て頂けたなぁ、と。本当に嬉しい限りです。」

開放感のある吹き抜けがあるクルミドコーヒー。2階にはいくつか小部屋のような部屋があり、席でゆっくりコーヒーなどのメニューを味わうことが出来る。地下にも秘密の小部屋のような魅力的な空間がある。


店内にはところどころに可愛らしいクルミ割り人形がディスプレイされている。

開店の準備にきびきびと動くスタッフの方々。
こんな素敵な雰囲気のお店なら、それだけ多くの人たちが足を運ぶのもわかります。
ですが、意外なことにこのお店はやりたくて始めたわけではないと影山さんは言います。
「お店をオープンさせる前、本当はこの場所で何か運営するのは他の方に完全にお願いしようと思っていました。先ほどこの物件が空き家になってしまってマージュ西国分寺が生まれたとお話しましたが、そもそも生まれたきっかけは、やむを得ず引き受けた、という流れからのものでした。僕は、今は全く違いますが、以前はこの生まれ育った西国分寺が好きではありませんでした。時代に取り残された街。街自体にまったく魅力を感じていませんでした。このお店はやりたいと思って始めたお店ではなかったのです。」
驚くことに、マージュ西国分寺のきっかけは“やむを得ず引き受けた”という形だったと話す影山さん。西国分寺という土地が好きではなかったという事実にも驚きます。
しかし、いざここでお店を開くということになり、そしてお店を続けていくうちに、徐々にこの土地が好きになっていったということです。
それは、ここで何かを始めるにあたって相談をした、『カフエ マメヒコ』の井川さんの企画書(『演出覚書』)との出会いからです。