
☮ Posted by Kota Ishizaki2013.4.12
名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史のある店。
名店の形はさまざまです。
この「名店手帖」では、そんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的なお店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。
そのお店がなぜその場所に誕生したのか?
そのお店の店主はどんなことを考えてこのお店を始めたのか?
この企画ではそんな名店が出来るエピソードをたくさんお伝えしていきたいと思います。
レトロ雑貨と古着と古本を扱う「出来たばかりの名店」
埼玉県川口市にある、レトロ雑貨と古着、そして古本を扱っている小さなお店、それが「Sheep Closet」です。
じつはこのお店、昨年オープンしたばかりで、名店と呼ぶにはまだ若過ぎるのですが、
本当に偶然出合ったこの魅力的なお店をどうしても紹介したかったので、
記念すべき第一回目は、この「出来たばかりの名店」をご紹介します。
「Sheep Closet」との偶然の出会い
僕がなぜこのお店を見つけられたのかというと、
今住んでいるところの近所だから。本当に偶然でした。
自宅から駅まで歩いている途中、雰囲気のよさそうなお店が突然目の前に現れたので、
なんとなく興味を惹かれてふらりと入ってみました。
店内にはユニークな本や雑貨がセレクトされ、その数々に驚きました。
しかし、お店に入ってからしばらく経っても店主の姿は見えず、
営業しているのかしていないのか、
しばらく時間が経った頃、カウンターの奥から店主がひょっこりと顔を出したので、
僕は店主に声をかけてみました。
それがSheep Closetと店主の千葉あやさんとの出会いです。
ようやく形になった、好きなものに囲まれた空間
店主の千葉あやさん(30)にお店のことを伺いました。
「お店をオープンさせたのは2012年10月14日です。ずっとお店をやりたくて、やっとオープンさせることが出来ました。3、4年前から計画していて、本当にやっとです。」
店内には小さなあかりと柱時計の音、そして小鳥たちの鳴き声。
なんとも心地よい、ゆるやかな時間が店内には流れています。
それぞれに時を刻む時計たち。
レトロ雑貨、人形や珍しいポストカードも。
この小さなお店にはたくさんの雑貨、古着、そして古本が並んでいます。
古着は約150点、雑貨は500点、古本は2000点ほど。
雑貨も古着も楽しいですが、中でも古本のセレクトはかなりの充実振り。
ぎっしりと棚に並べられた古本。絵本を中心に様々な本が並ぶ。
植物、こけし、子ども、動物などの本。猫をテーマにした本も多い。
「並んでいる本は古本がメインで新刊も少し。ジャンルは絵本を中心に小説、エッセイ、科学、動物、料理など、いろんな本があります。」
絵本は定番の「ぐりとぐら」、「はらぺこあおむし」、ブルーノ・ムナーリの作品から、石井好子、中谷宇吉郎や澁澤龍彦まで絵本以外もはばひろく様々な本が並んでいます。ebayで仕入れたチェコやアメリカの絵本も。
「私は元々漫画が大好きで、以前は漫画ばかり読んでいたのですが、このお店には漫画はあまりないですね。漫画の次は絵本が好きになりました。アートが好きで、絵本もアートブックとして読んでいました。それが数年前のことで、絵本はそれからずっと好きです。」
お店の本棚は、実はほとんどの本が売り物ではなく、ライブラリー(非売品)となっています。
「非売品ですが、ご自由にお読みください」というライブラリーの紹介文。一部販売も行っています。
「本がたくさんありますが、ここは元々雑貨のお店。それは最初のコンセプトでもあります。
本屋さんではないんです。でもかなり本が多いですが(笑)」
本も雑貨も、増え続ける一方だという千葉さん。仕入れは自ら骨董市、フリーマーケット、古本市などに足を運び仕入れをしています。
しかし、一体なぜこのような場所に?
駅から歩いて20分はかかる人通りがあまりない場所に、この小さな名店はあります。
「お店をずっとやりたくて、店舗をずっと探していたところ、この物件に出会いました。駅から離れていますが、こういった物件はなかなかなくて。ここの空き情報を見つけたとき、すぐここだって思いました。駅から遠いとか、人通りとかはあまり考えなかったかも(笑)」
営業日が決まっていないのは、千葉さんは他にも仕事があり、その関係から。
でも18:00~21:00というかなり短い時間しか営業していないのは?
「それも仕事の関係があるんですが、実はお店は昼間からも開けられて、でも夜のその時間帯でしか今は営業していません。なぜかって、日が沈んで暗い方がお店の雰囲気が良いじゃないですか(笑)。それに昼にお店を開けると、ここは日光がたくさん当たって、それもちょっと嫌なので、夜のその時間だけひっそりと営業しています。」
そんなひっそり営業のSheep Closet、お店とは対照的に積極的な活動も行っています。
その名は「ひつじ図書」。
Sheep Closetが本だけで活動するときの屋号です。ひつじの由来はお店の名前から。
ひつじ図書はまだ出来て2ヶ月ほど。しかし、いきなり京都の名店本屋さん「ガケ書房」で衝撃のデビューを飾ります。
「本を選ぶのは大変でしたが、なんとかガケ書房さんの貸し棚を貸してもらえることになりました。現在も貸し棚に「ひつじ図書」はあります。最近3冊売れたんです!」
そう嬉しそうに話す千葉さん。本当に心から本が好きなんだなぁ、と千葉さんと話していると思います。
店主の千葉さん。笑顔が魅力的な女性です。好奇心旺盛で知識も豊富。笑顔で迎えてくれます。
ひつじ図書は今後も積極的に活動していくそう。
「Sheep Closet」と「ひつじ図書」。なぜ羊なのかというと、羊が好きだから。そこもなんともストレートです。
2つの羊から店主の「こだわり」と「セレクト」そして雑貨や本が本当に好きという「愛情」を感じることが出来ました。
そんなお店「Sheep Closet」は今日もひっそりと営業しています。
「Sheep Closet」
営業時間:18:00~21:00(不定期・不定休)
場所:埼玉県川口市中青木3-15-1
MAP:http://goo.gl/j5xmQ
※お店の開店情報は、twitterにて事前にご確認ください。
(twitterの更新はたまに忘れてしまうことがあるそうですので予めご了承下さい)
twitter:@sheepcloset
mail:sheepcloset@gmail.com
http://sheepcloset.tumblr.com/
「ひつじ図書」
http://www.facebook.com/Hitsujitosyo
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Profile
石崎孝多 / Kouta Ishizaki
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。
Amazonにない本を紹介するnomazonを始め、「五感書店」「朝まで本屋さん!」など本の企画、
その他、執筆、選書、店舗のディレクションなどを行っている。
クリエイティブ情報発信のプラットフォーム「ART AND MORE」キュレーター。
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Writer/Editor:Kouta Ishizaki
Photo:Daisuke Nakajima
Editor:Atsushi Shimizu
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