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流行(ランウェイ)から逃亡(ランナウェイ)した洋服たちの脱走劇を想像します。
どこから来てどこへ行くのか知れない洋服たち、それに袖を通していたかもしれない人たち。
やわらかい布に包まれた人生たち。






●貝殻の模様のワンピース



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海へ行きたい。

先週、仕事を辞めた。衝動でもなく、野心でもなく、怒りでもない。ドラマティックな理由は一つもない。
新しい勤務先はもう決まっている。初出社日は一週間後。ふらりと退職するほどの度胸は私にはなかった。

私は春が嫌いだ。「新しい何かを始めろ」「素晴らしい出会いを見つけろ」「ほんとうにやりたいことに気づけ」とせき立ててくる。
そりゃあ私だって、溌剌とした気分になって、悲しいことは忘れてしまった方がいいことは分かっている。だけど暮らすだけで精一杯ということだってあるでしょう。

長袖のワンピースに着替えて出かける。小さな貝殻のプリントは完全にバカンス仕様だが、襟も袖もしっかり塞がっていてどう見ても暑い季節向きではない。
夏の模様なのに春の型紙だなんてどうかしていると思った。だけどこれ、実はとびきり優しい仕立てなんじゃないの?と思う。海へ行きたいけど行けない人のための洋服だ。
行けないことはない、今すぐ行けばいいじゃないかと思われるかもしれないが、私が見たいのは春の海ではない。荒野のような砂浜ではない。
穏やかな気候の中、冬の名残りの枯れた草がただ時間が過ぎるのを待っている様子に打ちのめされたいのではない。一足飛びにエネルギッシュで活気のある自分のもとへ行ってしまいたいのだ。
強い風が吹く。空想の波のように青いプリーツが翻る。見えない麦わら帽子がさっと飛ばされていったのを感じ、振り返った。






© Arisa Harada







harada はらだ 有彩 / Arisa Harada
テキストとイラストレーションをテキスタイルにして身につけるブランド《mon.you.moyo》を展開しています。
モチーフは強い女の子たち。
monはフランス語で「私の」、youは英語で「あなた」、moyoはスワヒリ語で「たましい」。
私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる。

web site : http://arisaharada.com
twitter:https://twitter.com/hurry1116



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< キュレーター >
タカヒロコ
イラストレーター/愛鳥家。生き物の力に動かされ、私もまた生きている。
web site : http://takahiroko.net







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