ウサギノネドコ

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名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史がある店。
名店の形はさまざまです。

この「名店手帖」ではそんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的な名店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。

今回ご紹介する名店は、京都にある一日一組限定の小さな「宿」と、不思議な品揃えの「雑貨屋」がひとつになった京町家『ウサギノネドコ』をご紹介します。



始まりは1つのオブジェから



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この美しい透明のアクリルキューブ。

手の中に納まる4cmほどのそのオブジェの名前は「宙-sola-」

「自然の造形美」がコンセプトというこのオブジェを僕が知ったのはもう4、5年ほど前になると思います。


いつだったかどこかで知って、ずっと素晴らしいプロダクトだと思っていました。

このキューブの中には美しい自然の風景が閉じ込められています。

「タンポポ」「サクラ(ソメイヨシノ)」「カラマツ」を始め、普段なかなか見ることのない、
「スターアニス」「メタセコイア」など、「宙-sola-」の中で見ることが出来る風景は約20種。


今回ご紹介する『ウサギノネドコ』は、この「宙-sola-」から始まりました。


京都二条にある『ウサギノネドコ』を訪ね、宿守の吉村順子さん(36)に『ウサギノネドコ』のこと、そして「宙-sola-」のことなど、お話を伺ってきました。



築75年の京町家に広がる、自然と幻想が混じり合う空間



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『ウサギノネドコ』に一歩足を踏み入れると、そこは今が一体いつの時代なのかわからなくなってしまうような空間が広がっています。
そこにあるのは、鉱物、動物の骨格、植物の種や木の実たち。



「この店がはじまったのは2012年8月のことです。この場所は主人、吉村紘一(36)の先祖が建てた京町家です。私たちの先祖は代々、京都で宮大工を営んでおり、棟梁であった吉村富三郎が、昭和14年に弟子のためにここを建てました。約75年もの時を経て、ボロボロになっていた建物を、現代の職人さんと私たちの手で蘇らせました。この場所は8年ほどずっと空き家になっていたのですが、今はこうして1階が雑貨屋、2階に宿がある『ウサギノネドコ』として営業をしています。」


『ウサギノネドコ』という名前はなんとも不思議な響きです。どういった由来があるのでしょうか。

「ウサギノネドコは「ヒカゲノカズラ」という植物の呼び名として古くから日本で親しまれてきました。呼び名の由来はさだかではありませんが、フワフワとした感触の葉や茎を、兎にとっての居心地のよい住空間と見立てたのではないかと思われます。私たちの小さなお店も、お客様にとっての居心地のよい空間を目指したい、そんな思いでウサギノネドコという名前をつけました。」


また、京町家は入り口が狭く、奥に長い事から「ウナギノネドコ(鰻の寝床)」とも言われていて、その名前にもひっかけているということです。



『ウサギノネドコ』がはじまるまで



「主人は東京でコピーライター兼クリエイティブディレクターとして10年に渡り広告代理店に勤めていました。主人の生まれは京都なのですが、彼は両親の仕事の関係もあり、幼い頃から海外で生活し、ずっと京都に住んだことがなかったのです。海外での生活の後、東京で仕事を始め、10年勤めた仕事を離れ、独立を決意しました。独立するにあたって移住を考え、故郷である京都へ、となったのです。京都生まれなのに、住んだことのない「京都」という土地に対する憧れもありました。なぜこのような店が出来たのかというと、主人が様々な仕事をしていったなかで、あるとき「自然に勝るデザインはない」ということに気付いたのがきっかけです。なので、『ウサギノネドコ』にまつわるものは一貫して「自然の造形美」
がテーマとなっています。「宙-sola-」は主人がまだ東京にいた7年ほど前からはじまっています。この『ウサギノネドコ』は店よりも「モノ」からスタートしたのです。」

はじまるまでに実に様々なエピソードがあったようです。

そしてあるときに気付いた「自然に勝るデザインはない」ということ。

そんな強いコンセプトがあり、『ウサギノネドコ』という店はつくられているということです。

「「宙-sola-」がまずはスタートし、この『ウサギノネドコ』がオープンしたのとほぼ同じ時期に、もう1つのプロダクト
「旅する小惑星」がスタートしました。「旅する小惑星」は小さな箱の中に鉱物をいれ、宇宙の一部を切り取って、箱にそっといれたような佇まいになっています。箱の中には“ミニチュアの宇宙”が広がっています。」


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きれいに並べられた「宙-sola-」。この「宙-sola-」だけを買い求めに来るお客さんも多くいるということです。


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こちらが「旅する小惑星」。「星を所有する喜び」をお楽しみください。


「これらオリジナルプロダクトを発表する場所、そして、人々が集まる場所をつくりたかった、という思いもあり、『ウサギノネドコ』をはじめました。少し長いですが、ただ“やりかたかった”ということだけではなく、京都という土地への思いもありますし、様々なご縁やタイミングが重なってオープンさせることができたのです。」



宿にもこだわりが



2階は宿泊できる宿になっています。

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築75年の京町家で、以前はボロボロだったとは思えないほどきれいな客間は1日1組限定の小さな宿。2つの客間をご用意しています。

お客様のためを考え、2階にお手洗いや水場を備えていたり、快適に、そして古くからある京町家で暮らすように滞在できるのがこの宿の1番の魅力です。

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2階から吹き抜けで下の1階を見下ろすことが出来る。ここは以前、竈での煮炊きで生じた煙や熱気を外へ逃がすための空間「火袋」だったという。


「宿ももちろん、この場所を蘇らせるにあたって職人さんと私たち自らの手で試行錯誤を行いました。そして1階に降りて頂くことになるのですが、外にお風呂があります。」

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苔や緑で生い茂った、丸い窓枠のあるお風呂。


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中はきれいにリノベーションされ、こちらは少しモダンな雰囲気で空間がつくられている。


「宿にも何度かいらっしゃってるリピーターの方もいますし、海外からのお客さまもたまにいらっしゃいます。お客様の多くは『ウサギノネドコ』のことをどこかで知ってくださっているのですが、単純に宿だけとしても、この場所は東山や嵐山など観光地とのアクセスも良く、立地も良いのでは、と思っています。」

また、2階には「博物館の2階に宿泊する」という別のコンセプトもあり、

観光シーズンになると予約でいっぱいになってしまうということです。




『レオ・レオーニ 希望の絵本をつくる人』
まるさんかくぞう
『オーレ・エクセル イン モーション』
『ハーブ&ドロシー』
『木のうた』
『きりのなかのサーカス』
『ママのスカート』
『かさ 』
『ブルックリン・ネイバーフッド』
『Casa BRUTUS 2013年 12月号』
『ファンタジア』