「othello」vol.04

昔、フロイトというヒゲの似合う精神科医がいました。彼によると、人間の精神構造は3つの機能からできているんだとか。その3つとはいったい何なんでしょうか。


彼曰く、人間の本能を「イド」というそうです。また、本能とは逆、社会的道徳のことを「スーパーエゴ」といい、このふたつの間で揺れ動く人間の思考や行動のことを「エゴ」といいます。なるほど、この3つのことなんですね。じゃあちょっとね、さっそく揺さぶられてみましょう。


例 自分の働くお店にきゃりーぱみゅぱみゅがきた場合

ツイッターでつぶやきたいなぁ。これが本能。

でも今仕事中だし、そもそもそんな事していいのかしら。これが社会的道徳。

いいや、写メだけ撮ってアップしよ。これがようするにエゴですね。

たちまちリツイート。時代を経て、エゴは拡散できるようになりました。



イドとスーパーエゴの間のエゴ。他にも間にある思想や行動はたくさんあります。
そもそも時間の中で生きているのだから、全ての思想や行動は間の中でうまれたりうもれたりしているんでしょう。



なんだか言いたいこといって文章からエゴの匂いがしてきたなぁ…



エゴのテキストエゴイスト。オセロ四回目、スタートです。





あぁ、僕もこの世界を自由に羽ばたいてみたかった


飛べばいいじゃないか。どこぞの領空であったとて、君を撃ち落とすほど世界は暇じゃない


いやそういうことじゃなくて……なんだ急に?誰なんだい?


誰でもないさ。そんなことは気にしなくていいよ。


気にするでしょうよ。名前も名乗らない。姿もみせない。信用のひとかけらも見当たらないね。


自分の殻に閉じこもってるやつに言われたくないね。それにわたしには名前もないし姿もない。いわゆるひとつの超常現象だと思ってくれて構わないよ。


どういうことだいそれは。


そういうことだいこれは。だいたいが私に突っ掛かる局面でもないだろう?


ああいやだ。こんな時にいよいよややこしくなってきた。


ある程度呑み込んでくれないと事態は進まないじゃないか。ものわかりの良さは道なき未知を開くよ。


勝手なことばかりいいやがる。


君が私を疑うからじゃないか。とにかく君は飛んだらいい。


ああもう少し黙ってくれないか。僕には翼もなければこの殻を、ましてやほんの薄い膜すら破る力がない。ほっといておくれよ。


ほうっておくなら最初からほうっておく。つまり私は君をほうってはおかんよ。


かんべんしてくれ。あんたに僕をどうにかできるとは思えない。


そんなことはない。君を飛ばすことができるよ。


パチンコ玉みたいに言いやがって。この姿をみていってんのか?ふざけたことを言わないでくれ!


姿かたちで物を言っているんじゃないよ。君の純粋に飛びたいという気持ちに賛同、協力したいだけさ。それに気持ちひとつで変われるって聞いたことないかい?


はぁ…僕がこの後に及んで変な欲を口に出すから悪魔がうそぶきにやってきたのか…
飛びたいなんてのは所詮僕のエゴ。どうにもならないことじゃないか。


たしかにエゴかもしれない。君には君の果たすべき使命があり、それは飛ぶことではない。でも君のその思いは一言にエゴだとは言い切れないよ。そもそも君のその使命こそ、人間のエゴでもあるのだから。


だとして…だからって飛べるかどうかってのはまた別の問題じゃないか


問題を細分化してもしょうがないだろう。粉末にしたところで問題は問題さ。
大丈夫、君のエゴが99%だろうと、絶対的でない限り可能性はある。そしてその可能性を可能にするのがさっきも言った気持ちだよ。


気持ちなんかで変われるものか。


そもそも君の気持ちが口から漏れて私の耳に届いたことで、こうして状況は変わったんだ。これもひとつの可能性といえないかね?君は状況を変えたんだ、あとは君が飛べばこの一連の流れ、舞台は成立する。君が変えた状況に君が立たなくてどうする?


そんな…そんな簡単なことじゃないよ。気持ちだけ強く持ったってどうにもならないことはあるんだ!


だから、君の強い気持ちがこの状況を引き起こしたんじゃないか。気持ちは形になって動き出した。もう半分どうにかなってんだ。


僕もどうにかなっちまいそうだ!


ああもう少しの辛抱だ。そもそも君はどうして飛びたいんだい?


わからないよ…ただ僕は…僕は飛んだことがないから飛びたいのさ!ただそれだけなんだよ!


じゅうぶんだ。さあもう余計なことは考えなくていい。
舞台の膜は私が払ったよ。あとは3カウントで殻を破る。そこから先はうまくやってくれ。さあ行くぞ!3…2…1…


え?ほんとに?ほんとにほんとうかい?


行ってらっしゃい!



「othello」vol.04 © Kotaro Takayanagi



なんにでも白黒つけたがる人がいます。

奇跡のように思われる現象も、科学的に突き詰めていけば説明のついてしまうことが多々あるそうです。

でも、なんにでも正解を出すことがいいようには思いません。


超常現象と科学的見解。この二つの間で揺れ動く思考の翼。


先人はそれを、浪漫飛行と呼びました。






高栁 浩太郎 / Kotaro Takayanagi
東京在住。起きている時は眼鏡をかけ、寝ている時はふとんをかける
目が悪く、寝相のよいイラストレーター
2013年 第2回 東京装画賞/銀の本賞(一般部門)
2011年 玄光社 イラストレーション ザ・チョイス 第176回/入選(中村佑介 選)
2011年 誠文堂新光社 イラストノート第12回 ノート展/審査員賞 有山賞(有山達也 選)

http://www.minato8.com/



© Kotaro Takayanagi




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