名店手帖 vol.10「さんまるよん」

名店手帖 vol.10 「さんまるよん」 © ART&MORE
名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史がある店。
名店の形はさまざまです。

この「名店手帖」ではそんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的な名店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。

今回ご紹介する名店は、オンラインショップです。
名店手帖では2度目となるオンラインショップへの取材。
『さんまるよん』をご紹介します。


楽しい商品が並んでいる…だけでなく



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おもしろい、わくわくするような商品を並べているオンラインショップはたくさんあります。

偶然見つけた「さんまるよん」というオンラインショップ。

最初はおもしろいセレクトだなぁ、と1つ1つの商品を見て思っていたのですが、他のオンラインショップとの違いを見つけ、そこがどうしても気になりました。


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現在まで6回公開されているこの連載が、なぜか妙に気になったのです。

ライターのKadponさんによって書かれているこの「言葉のスキマ」は淡々と流れる日常を写真とともに綴っている小さなコラムです。


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※3点の写真は「言葉のスキマ」より転載。


透明感がありながらもどこかノスタルジックな世界観を感じることが出来るこの「言葉のスキマ」。

なぜこの連載を掲載しているのか?

そこがどうしても気になってしまいました。いえ、もちろんそこだけが気になったわけではもちろんないのですが、なぜか妙にひっかかったのです。

そんなひょんなことから取材のご協力をお願いしてみました。



訪れてみると、そこは


取材のお願いをメールでやりとりしていて、

対応してくださったのは「さんまるよん」を一人で運営するこぐれそうさん。

「取材は大丈夫ですが、撮影の点で少し不安が…。事務所をあるブランドさんとシェアさせて頂いており、事務所が今まで取材されてこられた方々のようなお洒落な要素がほとんどありません…。それでもよろしいでしょうか?」

もちろん、全く問題ないので、可能であればぜひ取材ご協力を、と返信しました。


実際事務所を訪れると、そこはあるブランドの事務所兼作業場。


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慌ただしく働くスタッフの中に1人、優しそうな雰囲気のお兄さんといった佇まいの方がいました。

「お待ちしておりました。すみません、こんなところで。」

と挨拶をしてくれたこぐれさん。

え、本当にこんなところで?となるような場所にさんまるよんの事務所はあったのです。



「さんまるよん」とは?



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上から、「不用の用」を探るというコンセプトのもと、革で様々な形を製作している「不用庵」の『二重四角枡』と『正十二面体・器』、作家accoの『アニマルシリーズ』は白鳥のタペストリーとカラフルなアニマルpen、デザイナー・阿部寛文によるハガキが収納できる紙の箱『山』。


周りではバタバタと作業が続けられるなか、こぐれさんから「さんまるよん」というオンラインショップについてお話を伺ってみました。

「元々は純粋に何か始めたいと思って始めたオンラインショップです。基本的にはネット、ツイッター、それに知り合いに紹介してもらったり、展示会やイベントで気になった方にお声掛けしたりしながら、少しずつ商品を増やしていきました。商品セレクトの基準は僕の好き嫌いで選んでいる感じでしょうか(笑)。「さんまるよん」という名前は「さんかくまるしかく」からきています。僕はデザイナーという職業柄からかもしれませんが、グラフィカルだったり、幾何学的なものが好きで、そういった僕の好みのアンテナに引っかかった作品、商品をマイペースでのんびりとご紹介、お取り扱いしています。」


ショップがオープンしてそろそろ3年。紹介したい商品、作品が出てきたら掲載するという不定期な形をとってはいますが、“割りと2週間に1回’’というペースを設定し、それを出来るだけ守る形で運営をしています。

「ネットやツイッターで商品を見つけるときはちょっと違った切り口で見つけることが多いです。例えばスタート当初からお取り扱いしている『不用庵』さんの作品は、彼のツイッターが哲学的なことを呟いていて、それに興味を持ったことがきっかけでした。さんまるよんは『考える』をコンセプトにしています。ちょっと難しいですが、プラトンはideaという言葉を、視覚的なものの形ではなく、心の目で洞察された形、と考えたそうです。簡単に言えば、“表面”ではなく“中身”ですね。不用庵さんも中身が気になったのがきっかけで、お取り扱いさせて頂くことになりました。」


マイペースではありながらも、しっかりとしたコンセプトがあるさんまるよん。

セレクトされた商品1つ1つのエピソードは、深いストーリーがあるものから偶然出会ったものまで、実に様々。

そんな様々な商品とは違う、僕が引っかかった「言葉のスキマ」、そしてもう1つ気になっていた「Human color chart」についても伺ってみました。


ものづくりへのきっかけに

「まず『Human color chart』についてご説明します。これは名前のままですが、カラーチャートからきていて、人をカラーチャートのように紹介出来れば楽しいなぁ、と思い始めたアンケートです。」


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「H.C.C」というコンテンツ、中は作家さんへの気になったちょっとした事、日常に関してのアンケートとなっている。


「Human color chartは、“インタビュー”ではなく、あくまで“アンケート”となっているのが特徴です。あまりものづくりと関係のないような質問をあえてしていて、それはもっとものづくりを身近に感じてほしいから、という、ものづくりに対する僕の思いがあります。雑誌などを見ると、ものづくりをしている人、クリエイターと呼ばれる人のインタビューは憧れで終わってしまうのが多いような気がしていて、こういった内容にしてみました。好きな作家さんと一緒の血液型だったり、好きな色が一緒だったり、身近なところで接点を見つけてもらえると嬉しいなぁ、と。」

たしかにHuman color chartを見ると、各々の作家さんのことが身近に感じられます。全部手書きで書いてもらう点も重要なポイントということです。

「僕はおもしろいものを生み出せる人たちへのコンプレックスがありまして…。デザイナーなので、“ものづくり’’をしていると言えばそうなのですが(汗)、しっかり形として何かを生み出せる人へのコンプレックスという感じでしょうか。Human color chartは「ものづくり出来る人を考察する」といった内容にもなっていますね。」



スキマへの視点



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僕が気になった「言葉のスキマ」はどういったものなのでしょうか。

「こちらの連載のきっかけは偶然のものでした。Kadponさんというイラストレーターが、ライターとして書かれている連載なのですが、Kadponさんはおもしろい視点を持っていて、様々なことを“スキマ’’から見ているんです。その物事への捉え方が好きになり、連載のお願いをしてみました。」

徐々にこういった連載は増やしていきたいとも話すこぐれさん。

こぐれさんはあるファッション系のwebマガジンの運営に携わっていたという経歴もあり、情報を発信していくこのような形になったのは自然の流れだったようです。



思考を探りたい



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さんまるよんオープンから取り扱いがある『HenderScheme(エンダースキーマ)』の「HOMMAGE(オマージュ)」ライン。工業製品として生産されることの多いスニーカーを有機物で製作することにこだわりつくられている。あえて、紐や金具などすべての素材で革を使用し表現しており、コンセプトをストイックに貫くブランド。


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増田光さんの半磁器土で作られた「クマスプーン」は一点一々手作りの人気商品。増田さんはクマをモチーフにした作品を中心に様々な作品を製作している。小さな小物入れ「くま香合」も手作りで、全て一点ものの商品。


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東京わにデパートの籐(とう)でできた、「虫歯のヘッドドレス」と「ハチのヘッドドレス」はカチューシャになっているヘッドアクセサリー。アート作品としてのクオリティも高い作品。


「さんまるよんでお取り扱いさせて頂いている作家さんの商品、作品はもちろん僕がすべてセレクトしています。僕は魅力的な“モノ’’ももちろん好きですが、純粋に’’人’’も好きで、その裏側というか考え方にすごく興味があります。作家さんがどういった思考を持っているのか、という点です。伝えるのが難しいですが、“つくられたものよりつくれないもの’’に興味があります。


つくれないもの、つくれない部分をうまく伝えていきたい。

僕が「言葉のスキマ」を見て感じた何かは、さんまるよんから発信されるその部分だったような気がします。



さんまるよんのこれからと目指すもの



「THE TOKYO ART BOOK FAIR 2013に初めてリアル店舗としてさんまるよんを出店しました。さんまるよんでセレクトした6名の作家やブランドを紹介したのですが、なかなか反応が良く、新しい発見や出会いもありました。今後も何か機会があればそういった出店も行いたいとは思っていますが、まずは情報発信できるコンテンツを増やしていきたいと思っています。Human color chartをもっとまとめたいですし、言葉のスキマも今後も続けていきたいです。」

今後展開していきたいこと、やりたいことはありますか?

と質問したときにこのような返答をこぐれさんから頂きました。

商品を増やす、作家を増やす、といったことではなく、もっと情報発信をうまく行っていきたい、もっと関係作家をしっかり紹介したい、という、“販売すること’’のみに重点をおいていない姿勢に、個人的にとても好感を持ちました。

商品を売ることだけではなく、ものづくりにおいての制作、物語、背景などを“探ること’’や“紹介すること’’をもっとうまく伝えていきたいとこぐれさんは話します。


こぐれさんが目指すもの、さんまるよんが目指すものは「ものごとの真の姿」や「ものごとの原型」なのです。


ちょっと違うかもしれないけど、インタビューを終えて、こぐれさんらしさが現れている「言葉のスキマ」の連載回がありました。第四話から抜粋します。


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「効率化からみる寄り道」


「効率の良い寄り道」

この一瞬意味不明な、支離滅裂な語句が、
味気無い通勤、通学、待ち合わせ等の動き方を
よりいっそう楽しいものにしてくれるもの、
とわたしは信じている。


効率化したら、楽しさが無くなるかもしれない。

定休日にぶつかってはただ落胆するだけだし、
もっと面白いところがあったのか、とちょっとがっかりしてしまうことも、
一期一会な場所なら尚更沢山味わっておきたい。

その場の雰囲気の為に事前準備として、寄り道を楽しみたいものである。


Writer : Kadpon



寄り道が多い目的地への旅。

見た目だけで、表面だけで、目的地となるモノを好きになるのではなく、その過程である寄り道を楽しみたい。

「無駄な事ほど意味があったり、無駄なことから生まれる面白い事もあったりすると思っているので、その無駄を愉しむ姿勢が、物作りへの一つのヒントになるのではないかと思っています。」


ということを最後に話してくれたこぐれさん。


つまらない寄り道もあるけど、寄り道は多い方が楽しい。

個人的にはそんなことも感じたオンラインショップ「さんまるよん」。


未来の名店をまた一つ見つけることが出来た気がします。

ぜひこのお店を訪れてみてください。

そこには楽しいモノを発見出来るだけでなく、ものづくりへのアイデアとヒントも見つけることができるのではないでしょうか。



「さんまるよん」

HP http://sanmaruyon.com
MAIL info@sanmaruyon.com



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Profile

石崎孝多 / Kouta Ishizaki
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。
Amazonにない本を紹介するnomazonを始め、「五感書店」「朝まで本屋さん!」など本の企画、
その他、執筆、選書、店舗のディレクションなどを行っている。
クリエイティブ情報発信のプラットフォーム「ART AND MORE」キュレーター。
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Writer:Kouta Ishizaki
Editor:Atsushi Shimizu
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