名店手帖 vol.09「クルミドコーヒー」



本を通じて伝えていく



「クルミド出版の2冊の本は、このクルミドコーヒーから、少しずつではありますが、羽が生えたように様々な人たちの元へと届いていっています。感想も多く寄せられ、一つ一つの反響がとっても嬉しいです。


クルミド出版では、カフェからはじまった出版社らしい取り組みも始まっています。
その1つは、『珈琲1杯分のエッセイ』。


名店手帖 vol.09「クルミドコーヒー」 © ART&MORE


「『やがて森になる』の著者、小谷ふみさんによる8ページの作品集です。2013年末からの冬・春編では『初め』『距離』『見上げる』『未知』『天 ~あまね~』『書く』『人の手』と、計7種類あり、ひとつに3篇の作品を収録しています。名前の通り、コーヒー1杯が飲み終わるくらいの小さな作品集です。印刷は長野の藤原印刷さんにお願いしていますが、それを断裁して、折って、背中をミシンでとめて、は一つずつ自分たちでやっています。7種の作品集にはすべて違う色の糸を使用しています。このエッセイはメニューの中に“読み物”として記載してあります。“飲み物”や“食べ物”を注文するのと同じような感覚でご注文してもらえたら嬉しいなと。袋綴じになっていて、注文された方にはペーパーナイフと一緒にお渡しし、手で開いて読んで頂いています。」

メニューが季節ごとに変わるように、このエッセイも季節ごとに変えていくそうです。



もう1つの『本を楽しむ』企画は、『西国図書室』だ。


名店手帖 vol.09「クルミドコーヒー」 © ART&MORE


元々は毎週日曜日だけ開室していた、本好きの夫婦がはじめた私設の図書室がこの西国図書室。

“「世界で一冊だけの本」が集まった図書室づくり” を目指し活動している図書室です。

「この図書室の特徴は“持ち寄り型”であること。みんなの大事な本、思いの詰まった本、好きな本を持ち寄り、この図書室は作られています。この図書室に気になった本があれば自由に借りることが出来ます。本が誰かの元へ旅立って行くのです。そして、旅立った本の最後のページにはその本に対する感想やメッセージを添えます。」

クルミドコーヒーにこの西国図書室の分室が出来てから、影山さんはさらにこの西国分寺という土地が好きになったという。

「以前にも増して、西国分寺という街が見えてきたように思います。あ、この本、あの人が読んでいる、とか。普通だったら読まないような本でも、添えられたメッセージから『人』が気になって、本を読んでしまったりということもあります。本を通じて街の人とコミュニケーションしている感覚です。


「他にもう1つお客さんからの発案で“ブックキープ”というものが始まっています。お客さん自身が購入された、このクルミド出版の本を店内の本棚にお預かりし、本をボトルキープするような感覚で読んでもらっています。自分で本を買いたいけど、この店内で読みたいんだとお客さんから相談されたのがきっかけでした。ブックキープされているお客さんから『今日は青の5番でお願いしますね』なんて注文が入り、5番もなにもないのですが(笑)、お持ちします。そういった『本を楽しむ』企画が、お客さんとの関わり合いの中から生まれてきているのが嬉しいですね。」

クルミド出版、珈琲1杯分のエッセイ、ブックキープ、西国図書室と、本を通じての、今までに生まれることがなかった新たな発見と出会いが、街に生まれていっている。



これからも届け続けたい



名店手帖 vol.09「クルミドコーヒー」 © ART&MORE


「クルミド出版を始めて、改めてクルミドコーヒーのような“場”の大事さを感じています。このカフェがあって、出会いがあって、2冊の本が生まれ、いま羽ばたきつつある。こうした取り組みのほとんどは、『お店として仕掛けた』ものというより、お客さんとの関わり合いの中から自然と生まれてきたものです。これからも毎日毎日、このお店を開き続けていく先に、きっといろんなことが起こる。きっと今では想像もできないようなことも。そうした未来を楽しみに、ぼくらは1日1日を大事にしてやっていけばいいのかなと思っています。」


愛着なんてなかった、やむを得ず引き受けた、という形で始まったものの、クルミドコーヒーは多くの方に愛され、今や遠方からわざわざ人が訪れる名店になりました。

「本をきっかけに“遊ぶ”ことが本当に楽しいですね。」

という影山さんの言葉がとても印象に残っています。


本を出版する、ということは本当に大変なことで、その大変な作業を妥協せず丁寧に丁寧にこだわった影山さんとクルミドコーヒーのスタッフの方々。

しかし、それはクルミドコーヒーをオープンさせたときから全く変わっていないクルミドコーヒーの信念そのものでした。

クルミドコーヒーから生まれるものは、すべてが「贈り物」。

このカフェをボクらの娘のために。

約5年前に始まったこのクルミドコーヒーという物語は、クルミド出版を通してさらに多くの人たちに伝わっていくことと思います。

すべては偶然から始まったこの物語は、これからも様々な出会いを生み、西国分寺という土地で愛され続けていくのではないでしょうか。


名店手帖 vol.09「クルミドコーヒー」 © ART&MORE


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「クルミドコーヒー」
〒185-0024
東京都国分寺市泉町3−37−34 マージュ西国分寺1F >>MAP
定休日:木曜日
営業時間:10:30-22:30(LO 22:00)
TEL 042-401-0321
HP http://kurumed.jp/

「クルミド出版」
HP http://www.kurumed-publishing.jp/

クルミドコーヒー、クルミド出版、それぞれにTwitter、Facebookアカウントもあります。
ぜひご覧ください。





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Profile

石崎孝多 / Kouta Ishizaki
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。
Amazonにない本を紹介するnomazonを始め、「五感書店」「朝まで本屋さん!」など本の企画、
その他、執筆、選書、店舗のディレクションなどを行っている。
クリエイティブ情報発信のプラットフォーム「ART AND MORE」キュレーター。
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Writer:Kouta Ishizaki
Editor:Atsushi Shimizu
Photo:Masaki Ogawa
Logo :Yuuki Nishimura(NiHo)



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