名店手帖 vol.06 「密買東京」

名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史のある店。
名店の形はさまざまです。

この「名店手帖」ではそんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的な名店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。



密買東京



今回ご紹介する名店は現実の空間に店舗を持たないお店。そう、オンラインショップです。
見ているだけでわくわくする、そんな名店「密買東京」をご紹介します。



ふらっとやってきた、千葉さん



3年ほど前から仲良くさせてもらっている密買東京さん。
正確には密買東京メインバイヤーの1人、千葉敬介さん(41)。

僕が立ち上げ、現在はすでに離れてしまったお店「Only Free Paper」に千葉さんはふらっとやってきました。
「おもしろいお店ですね。あ、僕こういうものなんですが。」
そう穏やかな口調で挨拶をした千葉さんは、
「密買東京」という、ちょっと怪しい名前が入った名刺を僕に差し出しました。



密買東京


僕はそのとき、密買東京のことは知っておらず、
サイトを見て「おもしろいモノばかり並んでる!」
と衝撃だったのを今でも覚えています。

「石崎さん、商品提供してもらえませんか?よろしくお願いします!」
僕はちょっと悩んだのですが、協力することに。

こちらです(現在は販売終了)。
http://www.mitsubai.com/tokyo/detail/tk016403.html

これをきっかけに、千葉さんとゆるいお付き合いが始まりました。



最初はなんかわからない感じだった



今回取材をお願いするにあたり、僕は正直取材NGだとばかり思っていて、
「お受けいたしましょう」という返信を千葉さんから頂いたとき、
「密買東京の話がいろいろ聞ける!」と勝手にテンションがあがって嬉しくなりました。

密買東京を運営している会社は株式会社ハイライドと言います。
しかし、密買東京という怪しい名前が入った名刺とともに、僕はもう1枚、「東京R不動産」という名前が入った名刺を千葉さんから頂きました。

おもしろい不動産をたくさん紹介している会社「東京R不動産」。
千葉さんはその東京R不動産でマネージャーもされています。
独特の視点から紹介される様々な物件。
それはどれも今すぐにでも住みたくなるような、そんな魅力的な物件ばかり。

僕は千葉さんから声を掛けてもらったとき、密買東京は知らず、東京R不動産は知っていました。
あのおもしろい東京R不動産にも関わっている方…。
そのことを知ってさらに密買東京に惹かれました。

「密買東京のメンバーは全部で4人です。他に何名かたまにバイイングする方がいます。半年に1回とか、年1回とか。でも基本のメンバーは決まってますね。」

そう穏やかに話す千葉さん。話は続きます。



「東京R不動産が出来たのは今から10年ほど前。でも最初の半年はなんかわからない感じで、R不動産初期メンバーの1人でもある三箇山が毎週おもしろい不動産をサイトで紹介していました(三箇山さんは現在、密買東京のメインバイヤーの1人)。それは本当に紹介するだけで、ビジネスとしてではなく、ただおもしろいから紹介するだけというもの。そこからだんだんとビジネスとして展開していく話になり、東京R不動産は出来ました。ざっくりですが。」

こうして誕生した東京R不動産。
東京R不動産が誕生して数年後、密買東京が誕生します。



おもしろいことをしたい、おもしろいモノを紹介したい、でも辛い、でも楽しい



密買東京 カガリユウスケの「100年の壁」

カバン作家のカガリユウスケさんの「100年の壁」は「壁を持ち歩く。」というテーマで作られる、カガリさんのWALLシリーズ。エイジング加工の上からコーティングを施しているバッグで、他にも密買東京ではカガリさんの商品を多数取り扱っている。


密買東京 寄木細工のクラッチバッグ「MIYABI × OTA MOKKO WOODEN CLUTCH BAG」

寄木細工のクラッチバッグ「MIYABI × OTA MOKKO WOODEN CLUTCH BAG」。ファッションデザイナーのMIYABIさんデザイン、OTA MOKKOの太田憲さんの制作。日本では小田原・箱根にのみ存在する伝統工芸。


密買東京 「和片 洛中洛外図」

「和片 洛中洛外図」という、この商品はわっぺん。そう、「和片(わっぺん)」です。
京東都という、少し変わった名前のブランドの商品。読み方は「きょうとうと」。




密買東京 共栄デザインの「liquid bookmark」

これはbookmark、栞です。トロリと流れる液体のような。手に取ると、ペロペロとペラペラと、柔らかく折れ曲がり、本に挟むとペトリと表紙に。共栄デザインの「liquid bookmark」という商品。



東京R不動産が忙しくなり始めたとき、密買東京が誕生しました。

「なんかわからない感じで始まった東京R不動産ですが、お客さんも徐々に増えてきて、それに合わせてスタッフも増えていきました。それは本当にうれしいことだし、仕事もやりがいがあったのですが、何か寂しい気持ちがちょっとずつ出てきて…。うーん、難しいのですが、最初は本当に毎日がわくわくだったんですよね。それが段々薄れてきてしまったというか…。新しいわくわくを作ろう!と決心したわけではないんですが、ちょっとそういうことは思っていて、そんな思いから’’うっかり’’誕生したのが密買東京です。今から6〜7年ほど前です。」

初心を忘れず、のような、それに近い思いがあってうっかり出来たオンラインショップ、それが密買東京です。

「以前から物販サイトは機会があればやってみたいと思っていて、たまたまその機会が訪れて…。なので、あくまで’’うっかり’’みたいな感じで始まりましたね。」

魅力的なモノたちは全てバイヤーさんの目にかなったモノだけ。全国様々な場所からバイイングをします。
現在(2013年10月)、約240もの商品が並んでいる密買東京。しかし、これら魅力的な、わくわくするような商品たちは一体どこで見つけてくるのでしょうか?

「商品の掲載は毎週火曜日に行っています。正直、毎週かなり辛いです。本当に…。あぁ、また火曜が来たか、となっています。だって、さすがに探してくるのは大変ですから…。」

なんていうか、やっぱり大変なようでした。そりゃ、大変です。おもしろいモノばかりを揃えるというのは。

「紹介する、お取り扱いするモノたちは自分たちのアンテナに引っかかったものも多いですが、知り合いの紹介で知るモノもたくさんあります。本当にありがたいです。だって大変なんですもん…。」

毎週火曜日の更新ですが、目にかなったモノがないときは紹介が出来なかったりします。
ですが、現在並ぶ約240もの魅力的なモノの数々。
1年が大体50週なので、5年分。
これは本当にすごいというか、すごすぎることだと思います。
セレクトが決してブレることなく、継続して人が知らない魅力的なモノを紹介していく。

「良いモノに出会えないとき、探せないときは本当に辛いです。でも、密買東京を運営していて何よりも嬉しいことは
’’人に出会う’’ことです。それもみんなおもしろい人たちばかり。辛いけど、楽しいです。人と出会うこと。支えになっていますね。」



すべてオススメです



千葉さんに今までバイイングしたモノで、特にオススメのモノをお聞きしました。

「すべてオススメです。僕がバイイングしたモノの中には家や車もあるんですが、どれも全て良いモノです。
全部オススメです。」



密買東京 シャープでスタイリッシュな外観の「エアロハウス」

シャープでスタイリッシュな外観の「エアロハウス」。運ぶことも出来る、移動型の家。
お値段は¥1,050,000(税込)、¥2,625,000(税込)、¥4,200,000(税込)の3タイプ(別途見積発生の場合有り)。



密買東京 トレーラーハウス「1951 Royal Spartanette」

1台のみ、限定販売のトレーラーハウス「1951 Royal Spartanette」。お値段は¥4,400,000(税込)(輸送費用と設置費用は別途)。密買東京ではこのトレーラーハウスをシリーズで4種取り扱っている(現在はすべて完売)。



「他のバイヤーもみんなそうだと思います。こだわって良いモノだけを紹介しているので、サイトを更新することが出来ない週があるんですよね。」

こだわりを貫く姿勢、密買東京に並ぶ厳選された魅力的なモノの数々は、バイヤーのこだわりによって選ばれ、その選ばれたモノたちは本来持っていた’’モノ’’としての輝きをさらに増していくのです。



人に会うことの大切さ



密買東京


密買東京


密買東京


たくさんのわくわくが並ぶ、密買東京。

密買東京では、商品を取り扱いするにあたって必ず行うことがあります。

「作家さんに会いに行く」

これは実はすごく大変で、そして、すごく重要なこと。

「ほとんどの場合、作家さんには会いに行きます。たまに会いに行けない方もいらっしゃいますが、会えるのであればそのときはどんなに遠くでも伺います。商品、作品をまず知って、その後作り手さんを知るということが多いですが、モノを知っただけそのまま紹介、ということはほとんどありません。最初はモノから入るので、実際会いに行ったとき、作家さんの住まいやアトリエで驚くこともあります。見たことないぐらい、森の中だったりとか…。」

商品紹介の文章はバイヤーさんによってテイストが違いますが、あの魅力的な商品紹介の文章は担当のバイヤーさんが実際に作家さんと会っているからこそ書くことが出来る、思いの詰まった、そんな文章。

「作家さんもいろんな方がいますね。あまり会わない人もいますし、ちょくちょく会う人もいます。でも密買東京を通して、関係性が続いていく。これもまた運営していてとても嬉しいことです。」

魅力的なモノ、そこには魅力的な人がいるということ。

モノを通して生まれる関係性、本来の目的は魅力的なモノではあるのですが、その先に人がいるということです。



これからの密買東京



これから密買東京はどのようになっていくのでしょうか?

「これからももちろん誰もが知らない魅力的なモノを紹介していきたいのですが、少し違った’’サービス’’のようなものを増やしていきたいと思っています。」


密買東京 ’’野菜のお菓子’’

「こちらは三箇山がバイイングした’’野菜のお菓子’’という商品です。焼菓子の職人のハイジさんという方がいて、その方にまずは自分で育てた野菜を送ります。野菜がハイジさんの元に届き次第、ハイジさんがインスピレーションでお菓子を作ります。ハイジさんの手によって作られたお菓子はレシピをつけてお送りします。」
※野菜は必ず育てた野菜を送ってください。買ってきた野菜はダメです。先払いでの料金振込が必要です。


密買東京 ’’野菜のお菓子
このくらいの箱で届き、


密買東京 ’’野菜のお菓子’’
中にはお菓子がたくさん!あなたの送った野菜がハイジさんの手によってお菓子に。


密買東京 ’’野菜のお菓子’’
お菓子と一緒にハイジさんから手紙、そしてレシピが届きます。



「こういったただモノを紹介するのではなく、少し違ったサービスのようなものを増やしていければと思っています。違った意味のモノの魅力ですね。こういった商品を出来れば増やしていきたいのと、あとは’’密買ツアー’’なんてのも計画中ではあるんですが、ちょっと難しいかも…。がんばります。」

密買ツアー、なんて楽しそうな響き…。



モノと人



今回取材をさせて頂いて、以前から密買東京と千葉さんのことは知っていたのですが、
改めて貴重な経験が出来たと思っています。
以前から知っていたとは言っても、まだほんの少しのことだけだと思いますが。

実は、いくつか僕が千葉さんに紹介した’’モノ’’が密買東京に掲載されていたりもします。

「紹介した以前のあれ、どうでした?」

と千葉さんに聞いたら、

「うん、作家さんの家に行ってきた。」

「え、本当ですか!?はやっ!!

僕はまだモノだけしか知らず、けど千葉さんはもう作家さんに会いに…。

モノを通して人に会うこと。

密買東京では稀にリアルショップでのイベントも行っています。
密買東京はオンラインショップなのですが、リアルショップとして販売も行うのです。

「密買東京はリピーターさんが多くて、リアルでやったときにその方が来てくれたりもして、そのときはすごく嬉しいですね。あ、あの人ですか!?ってなります。名前だけは何度も見ているんだけど、実際会うとやっぱりすごく嬉しい。」

たくさんの魅力的なモノが並んでいる密買東京ですが、そこにはたくさんの魅力的な人がいます。それは作家さんであり、お客さんであり、そしてバイヤーさんでもあり。



毎年5月ぐらいに行われる密買ピクニックは、そんな魅力的な人たちが一堂に集う、楽しいピクニック。僕は今年で3回目の参加でした。

来年もぜひ参加したいし、また魅力的な’’モノ’’も紹介出来ればと思っています。


様々な魅力が集まる「密買東京」という名店。

今後も足を運び続けることになりそうです。

とりあえず、今度の火曜、また足を運びますね。


密買東京

最後にちょこっと登場、バイヤーの千葉敬介さん。おだやかでとても優しい方。またお会いしましょうー。




「密買東京」
http://www.mitsubai.com/tokyo/index.html

運営会社:株式会社ハイライド
デザイン:ASYL
編集・制作:安田洋平・田中慶樹
プログラミング:高橋照知
協力:東京R不動産



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Profile

石崎孝多 / Kouta Ishizaki
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。
Amazonにない本を紹介するnomazonを始め、「五感書店」「朝まで本屋さん!」など本の企画、
その他、執筆、選書、店舗のディレクションなどを行っている。
クリエイティブ情報発信のプラットフォーム「ART AND MORE」キュレーター。
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Writer:Kouta Ishizaki
Editor:Atsushi Shimizu
Photo:Shingo Hayashida
Logo:Yuuki Nishimura(NiHo)



密買東京



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