名店手帖 vol.03 「IONIO&ETNA」

名店。人気の店、有名な店、行列が出来る店、そして歴史のある店。
名店の形はさまざまです。

この「名店手帖」ではそんな名店も、それとは違った形の名店も、
今後名店になりそうな予感のする魅力的な名店(未来の名店)もたくさんご紹介していきます。


 

旅の余韻を感じる、非日常的な空間

 

第三回目となる今回は、東京・高円寺にある
「IONIO&ETNA(イオニア&エトナ)」というお店をご紹介します。


IONIO&ETNA


賑やかな高円寺の商店街を抜け、
日常の雑踏から離れると、そこには雰囲気の良い路地が現れます。

目の前には木造アパート。佇まいはどこか懐かしさを感じるような、そんな雰囲気です。
このアパートの2階に古道具屋兼アトリエのIONIO&ETNAはあります。


お店に入ると、そこは高円寺とは思えないような、無国籍な空間が広がります。


IONIO&ETNA
解放感のある空間にアンティークの器などの古道具、眼鏡、鉱物、古い絵葉書などが並ぶ。


並べられている商品はどれも味のある、こだわり抜いた品々ばかり。
まるで世界中を旅し、旅先で仕入れたお気に入りのものが並べられているような店内。
すべて店主の狩野岳朗さん(37)のセレクトによるものです。

僕が狩野さんと出会ったのは1年半ほど前のことだったと思います。
初めてこのお店に来たとき、旅を感じる空間、選び抜かれた商品の数々にとても驚いたことを今でも覚えています。

今回、初めて狩野さんとゆっくりお話しすることが出来ました。


「このお店がオープンしたのは2年前ぐらいなので、2011年4月ぐらいでしょうか。
 多分そのくらいですね。ちょっとあまり覚えていないです(笑)」

 そう穏やかに話す狩野さん。どうやらオープンはかなりのんびりだったようです。

「オープンしたとき、僕は下のカフェでまだ働いていて(現在はGallery Cafe 3)、
 でも2階の物件は借りてしまっていて、いつオープンさせようか悩んでいました。
 誰に言われるわけでもなく、お店を始めようと漠然と思っていました。
 なので、マイペースでスタートしましたね。そうそう、床を変えたら場所が良くなると思ったので、
 床をひたすら張っていました。床を張る為にこの物件を借りたんじゃないか、というぐらい(笑)」

1ヶ月半ほどの長い床張り作業を終え、ゆっくり、のんびりオープンしたIONIO&ETNA。
そんな感じなので、最初は店内に商品がほとんどなかったとか。

「最初は完全にギャラリーだと間違われていました。5、6点ぐらいしか商品がなかったです(汗)。
 でも今ではまあまあお店になりました(笑)」


IONIO&ETNA
中央のテーブルに並んだ商品の数々。

IONIO&ETNA

IONIO&ETNA
アンティークドームやビン、コンパス、バックパックなども。
取り扱っている商品は様々。



 

店の由来は、旅で訪れた記憶に残っている土地から

 

こうして話を聞いていても、まだちょっとわからない点が多いIONIO&ETNA。お店の由来を聞いてみました。


「お店の名前は“イオニア アンド エトナ”と読みます。由来は“イオニア海”と“エトナ山」から取りました。
 2つの地名はバックパッカーで訪れたイタリアの地名です。たまにヨーロッパへ一人旅しに行くのですが、
 旅から帰って来てだいぶたってから、あー、あの場所はとても良かったなーと思う事があるんです。
 旅している時は何とも思ってないんですが。お店もそんな風に思ってもらえたらいいなと思い、
 旅を振り返ったとき、一番印象に残っている土地から見えた“イオニア海”と“エトナ山”をもらいました。」


僕が最初に感じた、店主が世界中を旅し、旅先で仕入れたお気に入りのものを扱っているというイメージはまんざらでもないよう。


店内から感じる旅の雰囲気は、どうやら狩野さん自身の旅好きから来ているようです。


IONIO&ETNA

IONIO&ETNA

IONIO&ETNA

 

「実家は眼鏡と時計屋でした。実家のお店が移転することになって、そのとき倉庫に眠っていた時計・眼鏡を始め、
 様々な部品、修理工具などを私が預かり、その一部をこのお店で販売しています。
 そして1点1点手作業で作っているIONIO&ETNAオリジナルの商品も店内で販売しています。」


 

IONIO&ETNAのオリジナル商品たち

 

狩野さんが話してくれたIONIO&ETNAオリジナルの商品たちはどれも魅力的なモノたち。
古い洋書をイメージしたノート、暗闇を微かに照らす「クラヤミラムプ」、紙袋にロウ引きをした封筒、等々。


IONIO&ETNA
左上から時計回りに、「イオニア海」と「エトナ山」が印刷されたガリ版封筒、
オリジナルのノート、ロウ引き封筒、そしてクラヤミラムプ。


IONIO&ETNA
オリジナルのトートバッグ。


こんな魅力的な商品を産み出してしまう狩野さん。
狩野さんはこのIONIO&ETNAの店主でもありますが、これらの商品を作る以外に、画家としても活躍されています。



画家、狩野岳朗



「画家としての活動は7年ほど前からしています。
 一番最初にギャラリーで作品を展示したのは5年ほど前、ソーンツリー ギャラリー(現在は閉廊)でした。
 その後、様々な場所で展示をしては、雑誌「イラストレーション」主催のザ・チョイスで何度か賞を頂いたり、
 イラストのコンペに作品を出してみたり。」


IONIO&ETNA
狩野さんの作品。独特のタッチの抽象画がキャンバスに描かれている。

IONIO&ETNA
こちらは狩野さんの作品をcutoutし、ブローチにした作品。「unpeu(アンプ)」の遠藤順子さんとのコラボレーション。


「画家として活動の中で、冊子やzineを作ったり、挿絵やイラストを描いたりもしています。
 最近は書籍の装丁画の仕事もいくつか頂いています。装丁画の仕事は楽しいですね。
 元々、冊子やzineを作っていたということもあるので、本に関する仕事はどれも楽しいです。
 最近、HB GalleryのFILE COMPETITIONというコンペで装幀家・鈴木成一さんから賞を頂き、
 その関係で幻冬舎のPR誌「星星峡」のタイトル文字を含めた表紙すべて、本文のイラスト、
 挿絵の一部などのアートワークをやらせて頂いています。」


IONIO&ETNA
狩野さんが今までに装丁を手がけた書籍の一部。奥から『水澄ましと深海魚』須川眞、幻冬舎のPR誌『星星峡』、
『ジーノの家』内田洋子(文庫版)、太宰治『桜桃』(文庫版)。
『星星峡』の表紙と挿絵は、2013年4月号より1年間、狩野さんが担当する。



 

ものづくりへのこだわり

 

IONIO&ETNAの店主であり、画家であり、オリジナル商品も作ってしまう、実に様々な顔を見せる狩野さん。
IONIO&ETNAではその他に狩野さんが選んだ作家とコラボレーションを行い、
イベントに合わせ商品を作ることも行っています。

現在までにコラボレーションを行ったのはグラフィックデザイナーの高田唯さん、
イラストレーターのfancomiさん、ハンドメイド作家のunpeu(遠藤順子)さん、
ヒロイヨミ社(山元伸子)さんなど。
知り合った作家さん達の中で、お店の雰囲気に合った、シンパシーを感じた方々を選んでいるということ。

なんでもこなしてしまう狩野さんですが、ものづくりにおいてのこだわりや考えは実に深いものがあります。

「画家として活動しているので、画家として作ったものは作品ですが、
IONIO&ETNAオリジナルのモノは作品ではなく”商品”という気持ちです。
お店で作った商品はIONIO&ETNAのモノとして見てもらえたらいいです。
IONIO&ETNAオリジナルのモノが外に出るときは僕の名前よりお店の名前が出てほしいと思っています。
個人の画家としての活動、お店のオリジナル商品は別物だと思っています。
お店でオリジナルの商品を作ったりしていますが、今でも自分は画家としての気持ちの方が強くて、
絵描きを仕事にしたいと思っています。画家がやってるお店、それがIONIO&ETNAという感じですね。」

そう話す狩野さん。


IONIO&ETNA
穏やかな口調で淡々と質問に答えてくれた店主の狩野岳朗さん。


その言葉には画家として活動する強い意志とIONIO&ETNAの理念がありました。



「ながれほしの路」。

IONIO&ETNAがある路地はこのような名前があります。

お店があるのは一見、華やかとは決して言えない場所かもしれません。
しかし、この場所は狩野さんのこだわりと本当に好きなものがたくさん詰まった魅力的で素敵な空間で、
ながれほしのように輝いています。

お店を後にしたとき感じた余韻は、どこか遠くに旅をしたときに似た感情があります。

これからもこのお店を通して様々な人と物が出会い、旅をすることでしょう。

狩野さんとIONIO&ETNA、2つの旅はこれからもまだまだ続きそうです。

 


「IONIO&ETNA」
営業時間:だいたい13:00~20:00(定休日/火・水・木曜日)
場所:東京都杉並区高円寺南3-45-9-202
MAP:http://ionioetna.com/access.html
mail:info@ionioetna.com
URL:http://ionioetna.com


狩野岳朗
http://sktec.org


 

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Profile

石崎孝多 / Kouta Ishizaki
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。
Amazonにない本を紹介するnomazonを始め、「五感書店」「朝まで本屋さん!」など本の企画、
その他、執筆、選書、店舗のディレクションなどを行っている。
クリエイティブ情報発信のプラットフォーム「ART AND MORE」キュレーター。
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Writer:Kouta Ishizaki
Editor:Atsushi Shimizu
Photo:Shingo Hayashida
Logo:Yuuki Nishimura(NiHo)



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